2024.07.11
相馬さんの工房
相馬さんお手製の工具たち。
背筋が伸びる場所。
相馬さんの工房に入った瞬間、そう感じて実際に背筋を伸ばしてみた。
それはピリリとした冷たいものではなく、包み込まれるような心地よい緊張感。
この空間は相馬さんそのものなんだ、と納得しました。
機械を使わず、ほぼ全て手作業でジュエリー作りを行う相馬さんは、その筋45年。
ジュエリーを作り始めてすぐにご縁があったので、私たちとのお付き合いも同じくらい。
長い長い付き合いです。
地金を溶かし、線や板を引き、それを組み立てながら、形を作る。
石座なら、石に合わせて調整しながら爪や枠を組み立て、爪を倒して留める。
言葉にするとシンプルですが、金やプラチナで行うこれらの作業は、驚くほど繊細な作業で確かな技術と知識が必要です。
丁寧な相馬さんの仕事は、精巧でいて相馬さんにしか出せない'ぬくもり'が生まれ、その'ぬくもり'は、機械で作ったものには宿らない特別な空気感を作り出します。
その相馬さんから工房を閉めるという連絡をもらい、ご挨拶に伺いました。
4畳程度の小さな部屋には、作業机の他にローラーがあるだけのミニマムな空間。
この小さな作業机でほぼ全ての工程をこなし、あのきれいなジュエリーが生まれるなんて!心の中で思わず拍手しました。
形成するパーツや掴むものに合わせて、削られ形を変えたやっとこやピンセット。
や坊主やクランプも相馬さん仕様に形が変えられています。
机、ローラーはもちろん、全ての工具に相馬さんの'ぬくもり'が宿っているようで、見ているとなんだか穏やかな気持ちになります。
いつもピンとしている相馬さんの背筋がぐっと丸まって、正座で作っている様子を想像する。
工房で流れた時間の重みを感じつつ、お礼を伝え、工房を後にしました。
雨だというのに、奥様と一緒に外まで見送ってくれる最後まで紳士な相馬さん。
ほんとうにお疲れさまでした。
相馬さん
グータッチでお別れ、キュートな奥様。